『無題』 (本店)
木の花を好むようになってからかなりの歳月が経っている。
何がきっかけだったのか思い出せないでいるのだが
自分の中に花は木の花と決めているところがあるような気がする。
木の花にはどこか遠慮した表情があるように感じる。
桜も良く見ると恥ずかしげに幹から短い柄をのばして
花をつけていたりして、それは数日のことである。
主役は幹や枝葉であって
花は一時の客人とばかりに宙に霧散して消える。
いつ咲いたのか人に知らせたがらぬ木も多い。
柳・銀杏・プラタナス・けやき それぞれに目立たぬ
挙措で花をつけ知られずに散らす。
これらの木は並木などに植えられているのでおなじみだが
なかなか花どきを気取らせない。
そこに木のはじらいをみる。
木の花が好きになったのはその見せたがらぬ、
しかし着実に咲く健気さ律儀さ、そしてしたたかさも
少々入り交じった気性が好きである。
我が家の狭いベランダに今が盛りとばかりにベルフラワーが
鉢から零れ落ちそうに咲いている。

薄紫のラッパ型の可愛い小花。
友人から頂いたもので毎年私を楽しませてくれる。
木の花を好むようになった私にとってこれはまた私には
たいせつななくてはならぬ友人なのである。

こうさか 本店 A.K.
